小説「サークル○サークル」01-333. 「加速」

何も言わないアスカをヒサシは見ている。視線を感じながら、アスカはカウンターの向こう側にあるグラスの置かれた棚をじっと見つめていた。
「君の答えは?」
ヒサシは落ち着いた調子で言った。余裕があるのが見て取れる。
アスカはヒサシの方を向くと、にっこりと微笑んだ。
「わかったわ。その代わり、私が別れさせ屋として依頼されているということをあなたが気が付いたことは黙っててくれる……ということね?」
「そういうことだ。やっぱり、君は頭の回転が速いね」
「でも、上手くいくかしら?」
「何が不安?」
「あなたたちが別れたということを相手にどうやって信じさせればいいのかな、と思ったのよ」
「それは難しいね。そうだなぁ……」そう言って、ヒサシは考え込む素振りを見せて、続けた。「彼女にも別れたと言わせて、一ヶ月くらいは会わないようにするよ」
「破局を偽装するってことね」
「ああ」ヒサシは頷く。
「それはいいかもしれないわ」
アスカは言って、にっこりと微笑んで見せた。

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