小説「サークル○サークル」01-332. 「加速」

アスカは嫌な予感がした。ヒサシはきっと自分がイエスと言わざるを得ない条件をつきつけてくるだろう。そうして、自分の都合の良いように、全てを回していくのだろう。
このままではまずい、とアスカは思った。けれど、思うだけで、解決策はすぐには浮かばない。
マキコからの依頼のこともある。どうしたものかと頭を悩ませた。
「依頼者の男に伝えてほしいんだ。彼女と俺は別れたって」
アスカは口の中で小さく「えっ……」と言ったが、ヒサシには辛うじて聞こえなかったようだ。
アスカはヒサシが勘違いしているのだということに、ワンテンポ遅れて気が付いた。
ヒサシはレナのことを好きな男が不倫をやめさせようとしていると思っているのだ。きっと、レナからさっき中華レストランで会った、レナとヒサシを別れさせようとしている幼馴染の話を聞いたことがあったのだろう。だから、依頼者のことを「男」と言ったと考えれば、辻褄が合う。
アスカはほっと胸を撫で下ろし、モヒートを一口飲んだ。

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