小説「サークル○サークル」01-386. 「加速」

「君の仕事はいい仕事だと思うよ」
 シンゴは静かに言った。アスカは空になったワイングラスから、シンゴへと視線を移す。その表情は複雑さをたたえていた。
「いい仕事、か」
 アスカはぽつりと言うと、立ち上がり、新しいワインを持ってくる。
「シンゴも飲むでしょう?」
「ああ。アスカが飲むのをやめるまで付き合うよ」
「ありがとう」
 アスカは赤らんだ頬を緩ませた。
 アスカは新しくワインを開けると、新しく出したグラスに注ぐ。今度はロゼだった。
「珍しいね。アスカがロゼを買うなんて」
「たまにはね」
「何かで気分転換をしたかったんだね」
「そうなのかなぁ」
 本当は泣きたいのかもしれない、とシンゴは思ったが、それは言わなかった。泣かせてあげるのも優しさだけれど、泣きたいことに気付かない振りをするのも優しさだからだ。
「乾杯」
 シンゴとアスカはどちらからともなく、グラスを合わせる。
「美味しい!」
 アスカは嬉しそうに言う。
 いつもこんなアスカを見ていたいとシンゴは思った。
 アスカが悩んだり、悲しんだりしているのは、やはり見ていて辛い。
 そう思った時に、シンゴはどれだけ自分がアスカのことを好きなのかを知った気がした。


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