小説「サークル○サークル」01-233. 「加速」

「どうして?」
 アスカはレナの真意が汲み取れず聞き返す。
「アスカさんは完璧な人と付き合ってるのかなって、思っていたから」
「そんなことないわよ。完璧な人には憧れるけど、結局、最終的に選ぶ人はそういう人じゃないのよね」
「どうしてですか?」
「そうねぇ……。完璧であることより、大切なことがあるからかしら。完璧な人は憧れもするし、尊敬もするわ。自分が完璧ではないから。だけど、それだけじゃ、人間はダメなのよ」
 アスカの話にレナはうんうんと頷きながら聞き入っている。
 お酒も入っている所為か、アスカは上機嫌で話をし、仕事だということを忘れそうになる。
「極端な話、完璧な人がいいなら、ロボットでもいいわけじゃない。だけど、どこか不完全なところがあるから、その部分を自分が補ってあげたい、助けてあげたいって思うのよ。補うところがない人は、自分がその人のそばにいる明確な理由をなくしてしまうでしょう」
「確かに……」
「昔ね、不倫をしていたことがあるの」
 アスカは緻密に練ったシナリオを語り始めた。

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