小説「サークル○サークル」01-163. 「加速」

 食事を終え、シンゴは書斎に戻ると、アスカから預かった書類に再度目を通した。
「大学3年生、20歳、母親と2人暮らし、か……」
 シンゴはレナのプロフィールを見て、溜め息をついた。父親がいなければ、年上の男性を求めるのは仕方がないことだ。けれど、相手が既婚者なら、仕方ないでは済まされない。
「カフェでバイトしてて、常連だったターゲットと次第に惹かれあって、そのまま関係を持ってしまった……ってところかな」
 シンゴは思いついたことを口にする。彼の仕事の最中の癖だった。声に出した方が頭の中が整理出来て、考えがまとまりやすいという理由で、この仕事を始めてからずっとこのスタイルを取っていた。
 シンゴはパソコンに向かうと、設定を書き始める。基本的なアスカの情報はいじらず、アスカの基本情報に新たな項目を肉付けしていくような形で設定を作り上げていく方法を取ることにした。
 その作業は普段の小説を書く手法とはいささか違ったが、これはこれで面白いとシンゴは感じていた。

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