小説「サークル○サークル」01-162. 「加速」

「それで僕に相談したいことっていうのは何?」
「レナに接触する時の私の設定を作ってほしいの」
「設定?」
「ええ。要するに、私は登場人物Aを演じるってこと。私としてじゃなく、登場人物Aを演じて、レナと接触して、仲良くなるつもり」
「今までもアスカとしてではなく、別人としていろんなターゲットに接触してきただろう?」
「それはそうなんだけど、今回はかなり作り込まないと難しそうなのよ。環境も特殊だし。素性を曖昧に出来るような環境じゃないから。だいたい、OL経験なんてないし」
「なるほどね……。よし、わかった。僕が作ろう」
「本当に!?」
「ああ。そんなに喜ぶなんて、意外だな。僕が断るわけないって、思ってただろう?」
「ううん。シンゴ、最近、仕事忙しそうだから、作ってもらうの無理かなって思ってたの」
「アスカの頼みを断るわけないじゃないか」
 そう言って、シンゴは微笑んだ。そして、アスカはほっと胸を撫で下ろす。
 これで第一関門は突破出来ると思った。シンゴが設定を作ってくれたら、あとはその設定を完璧に覚え、そういう人間を演じればいい。高校時代演劇部に所属していたこともあるアスカは、演技にはそれなりの自信があった。

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