小説「サークル○サークル」01-54. 「動揺」

「ねぇ、どうして、依頼者が依頼を断って来たかわかってる?」
 シンゴは眉間に皺を寄せたそのままで言った。シンゴの言葉にアスカは「わからないけど」とあっさりと答えたが、はっとして続けた。「もしかして、あなた、わかっているの?」その言葉を待ってましたとばかりに、シンゴは不敵な笑みを浮かべた。アスカは一瞬背筋がぞっとする。二の腕をこすりながら、アスカはシンゴのその不敵な笑みから目を離せずにいた。
「依頼者が依頼を断ってきた理由を本人は色々と繕うだろうけど、本当の理由はたった一つだけだと思うよ」
 そこでシンゴは言葉を区切る。
「もったいぶらずに教えてよ」
 仕方ないな、と言いたげにシンゴは口を開いた。
「君とターゲットが恋に落ちたらどうしよう、という不安からだよ」
「まさか」
 アスカはシンゴの言葉を鼻で笑った。
「君は何もわかってない」
 シンゴは鼻で笑ったアスカの目を見つめて言う。その目は真剣そのものだ。
「どういう意味よ」
「そのままの意味さ。女は全て浮気相手になりうる、というのが彼女の本心だと思うよ」
 シンゴは事もなげに言った。

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