小説「サークル○サークル」 01-41. 「作戦」

「あなたみたいな人がここで働いているのが不思議でね」 「どうしてです?」  アスカはそっと胸を撫で下ろしながら訊いた。 「頭の回転もいいし、受け答えもいい。ここで働くには実に惜しい」 「……そんなこと」  アスカの返事に彼女が気分を害したのだと思ったのか、ヒサシは「失礼」と言って、苦笑した。 「決して、接客業を軽んじているわけではないですよ。ただ接客業というよりは、営業向きだって思ったんだ」 「そんなこと考えてもみなかったわ」 「自分の適性を正確に把握している人間は少ないからね」 「転職する際の参考にさせていただきます」  アスカはヒサシに笑顔で言った。ヒサシが何か言いかけた時、別の客に呼ばれてアスカはヒサシに背を向けた。 ヒサシは口を噤み、視線をアスカからそらした。じっと彼女を見ていることがなんだか急に気恥ずかしくなったのだ。自分でもどうしてそんな風に感じたのかわからず、ヒサシは眉間に皺を寄せた。 アスカはヒサシの方に向き直ると、「それでは、失礼します」と言って、別の客の元へ行ってしまった。

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