小説「サークル○サークル」01-4. 「依頼」

「ご主人の写真はある?」
 アスカの問いにマキコはバッグから1枚の写真を取り出した。
 いいバッグ持ってるわねぇ、とマキコのバッグを見ながら、アスカは思う。もしかしたら、マキコはパートで稼いだと言っているが、親が金持ちなのかもしれない。だったら、300万も貯金出来るのも納得出来る。
 アスカは写真を受け取ると、視線を写真へと落とす。
写真の中のマキコの夫は、眼鏡がよく似合うキレイな顔立ちの男だった。インテリな雰囲気を漂わせているが、全く嫌味な感じがしない。それだけではなく、この手の男にありがちないけ好かない感じや胡散臭さが微塵も感じられなかった
 なんだ、浮気野郎にしてはイイ男じゃない……とアスカは思ったが、それを表情に出さないように努めた。ここで顔に出してしまうと、信用問題に関わることを彼女は知っている。
「で、このご主人が浮気をしている、と」
「はい。そうなんです!」
 まぁ、これだけイイ男なら、黙ってても女が寄って来るわよね、と言いそうになったが、アスカはそんなことを思っているなんて、おくびにも出さずに話を続けた。
「別れさせてほしいってことは、もう浮気相手もご存じ?」
「はい……」
「その方はご主人とは、どういうご関係かしら?」
 アスカは写真に視線を落としたそのままで、マキコに問うた。

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