小説「サークル○サークル」01-393. 「加速」

 アスカは事務所に着くと、いつものようにお湯を沸かし始める。煙草に火を点け、脚を組むと机に置かれている書類に目を通し始めた。
 他の所員が関わっていた案件が無事終了したということは、電話で連絡を受けて知っていた。その詳細がこの書類には書かれてある。
 あとは私の案件が終われば、清々しく年が越せそうね……とアスカは思う。
 もう一息で、アスカの関わっている案件は完遂される。けれど、そのあと少しが上手くいくのかどうかがずっとアスカの心の中で引っかかっていた。
 やかんがお湯が沸いたことを甲高い音を鳴らして知らせる。アスカは煙草を灰皿に置くと、立ちあがった。
 いつものようにやかんから、ポットにお湯を入れる。茶葉が踊るように渦を巻いた。
 ぼんやりとポットをを見つめていると、お湯が少しずつ紅茶の色に染まっていく。
 アスカはそのまま三分間じっと見つめ続けていた。
 その間に彼女が考えていたことは、レナのことでもヒサシのことでも、マキコのことでもなかった。
 自分の夫であるシンゴのことだった。

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