小説「サークル○サークル」01-394. 「加速」

 この案件が終わったら、シンゴと旅行でもしようかな、とアスカは思っていた。
 正直、今回の案件で心も身体も疲れ切ってしまっていたし、少し休みが欲しかった。今までのアスカだったら、1人で旅行したいと思っていただろう。けれど、今のアスカはシンゴと一緒に旅行したいと思っていた。
 ここまで自分の心境に変化が起きたことにアスカはもう驚いてはいなかった。
 今回の案件を通じて、アスカはシンゴの大切さに気が付いたのだ。
 シンゴがいてくれたことで、アスカは今回の案件を乗り切れそうだと思っていたし、ヒサシとの関係を思いとどまれたのも、シンゴの存在があったからだ。
 自分の狡猾さや不安定さを目の当たりにして、アスカは自分の夫がシンゴでなければ、誤った選択をしていたのではないか、と思う。
 きっかけはシンゴが何かをしてくれたことではない。シンゴがその場にいつもと変わらずいてくれたことだった。
 アスカはシンゴの確かな存在感にいつしか安心感を得ていたのだ。

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