小説「サークル○サークル」01-353. 「加速」

 マキコを送りだし、アスカはどかっと椅子に腰をかけた。
 煙草の箱を振り、煙草を取り出す。最後の一本だったので、マキコはくしゃりと箱を潰した。
 手近にあったライターで煙草に火をつけると、煙をくゆらす。
 嫌なことがあった時、疲れた時は、煙草が最高に美味しい。今日はそのどちらもだったから、二倍美味しく感じるような気がしていた。
 アスカは進捗状況を報告しながら、くまなく、マキコを観察していた。
 けれど、結局、マキコに不審な点はなかった。
 お腹が大きくなっているのかどうかは、ワンピース姿のマキコからはわからなかったけれど、ヒールは履いていなかった。
 マキコの雰囲気からすると、妊娠する前まではきっとヒールを履いていただろう、というのは安易に想像が出来た。あれは、妊娠の為に大事を取っているのだろう。
 様々な状況を見ても、やはり妊娠しているのではないか、とアスカは思った。でも、妊娠している振りを徹底的にしているのかもしれない、とも思った。
 一体、どちらが真実なのだろう? とアスカは短くなった煙草を灰皿に押し付けながら、溜め息をついた。

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