小説「サークル○サークル」01-327. 「加速」

アスカとレナは中華レストランを出ると、しばらく無言で歩いた。
レナはきっとあの状況を説明する言葉を探しているのだろう。
アスカはそれをわかっていたので、何も言わなかった。レナが話したいタイミングで話し出せばいいと思っていたのだ。
駅まであと数メートルというところまで来て、レナが口を開いた。
「すみません……。みっともないところを見せてしまって……」
「別にいいのよ。みっともないなんて思ってないわ」
アスカの言葉に安心したのか、レナはぽつりぽつりと話し始める。
「彼は――ユウキは私の幼馴染なんです。ユウキは私が不倫していることを知ってて、ずっとやめるように言ってきてて……」
「そうだったんだ」
「はい……。何度放っておいてと言っても、顔を合わせる度に別れろって言われて、その度にケンカして……。さっきもお手洗いから帰ってくる時にまたその話をされて、口論になって……」
「そうだったの……。きっとレナちゃんのことが心配なのね」
「違います! ただのお節介なんです。ユウキは昔からああだから……」
窘めるように言うアスカにレナはむきになって答えた。

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