小説「サークル○サークル」01-16. 「作戦」

 シンゴは時折考える。どうして、こんな風になってしまったのか、と。けれど、答えは一向に出る気配がなかった。誰が悪いわけでも、何が悪いわけでもない、と彼は思いたい。しかし、自分に非があることは明らかだった。薄々感じてはいるのだ。自分の不甲斐なさに、アスカが次第にイライラを募らせているということも、それを解消する為には自分が作家として、しっかりやっていかなければいけないということも。でも、シンゴにはどうしたらいいのかがわからなかった。自分の中に書きたいものはぼんやりとある。しかし、それを形にするにはまだ早い。この気持ちは作家にしかわからないし、第三者にいくら説明したからと言って、理解してもらえるものでもなかった。シンゴはそれをわかっているだけに、アスカに表面的なことしか伝えられず、結果として、軽い言葉の羅列になってしまうのだ。
――もう少し、時間をかければ……。
 シンゴはそう思いながら、アスカを見送った後、机に向かった。パソコンの画面は明るく、開かれたワードには未だ一行しか書かれていない。『僕の奥さんは別れさせ屋で働いている。』彼は自分の実体験を元に小説を書こうとしていた。

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