小説「サークル○サークル」01-251. 「加速」

――“出会うのが遅かっただけ”
不倫を正当化するのによく使われるフレーズだ。
確かにそういうこともあるかもしれない。だとしても、やはり、きちんと離婚してから、向き合うべきだとシンゴは思う。そうでなければ、先に結婚した方がバカみたいではないか。
そして、奪われれば執着する。去られるよりもずっと。
シンゴはそこまで考えて、自分の考えを鼻で笑った。
自分がアスカに別れを切り出さないのは、アスカを愛しているからという理由が一番ではない。誰かに取られようとしているからだ、と気が付いたのだ。奪われそうになると惜しくなる。奪われるくらいなら、手放したくない。人間の人を愛するという思考はもしかしたらその程度なのかもしれない。
そんなことを考えながら、シンゴは尾行していた時に見たアスカとターゲットの姿を思い出していた。
あの二人は今、どんな関係でいるのだろう。
不倫をしているのだろうか。それとも、やはりアスカの仕事の邪魔になるから別れたのだろうか。それとも、何度か関係を重ねただけだろうか。
シンゴは色々な可能性を考えた後、考えるのをやめた。
溜め息をつき、気持ちをリセットすると、シンゴは再び文字を打ち始めた。

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