小説「サークル○サークル」01-220. 「加速」

アスカはカフェから事務所に戻ると、書類に目を通し始める。机の上に乱雑に置かれた書類を一枚ずつ確認し、必要なものはファイリング、すでにいらなくなった書類はシュレッダーにかけていく。
すると、ひらりと一枚の写真が落ちた。
「……」
写真を拾い上げ、アスカは無言のまま、厳しい眼差しで写真を見た。
その写真にはヒサシが写っていた。眼鏡の奥の瞳には、男としての色気がありありと見え、その唇には甘い言葉を期待してしまいたくなる何かがあった。
アスカはヒサシの写真を裏返すと、そのまま、机の上に置いた。
ヒサシとは随分会っていなかった。ヒサシのことが頭を過ぎっては、会いたいと思ってしまう自分がいる。けれど、それは許されないことだということも、アスカは知っていた。
アスカは別れさせ屋だ。この仕事を始めた時、仕事とプライベートは一緒にしないと決めた。
なのに、今回の依頼では、公私混同もいいところだ。アスカはヒサシの魅力にとらわれ、我を忘れそうになっていたのだ。

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