小説「サークル○サークル」01-382. 「加速」

「何……?」
 黙ったまま、自分をじっと見据えるアスカにシンゴは困ったように訊いた。
「そう言えば、シンゴの嗜好を知らないなぁ、と思って」
「あははは、今はいいよ。僕のことは」
 シンゴは笑いながらも、話を元に戻そうとする。まだシンゴは酔っ払っていない。そんな時にセキララに話すなんて芸当は出来そうになかった。
「セックスだけが全てなのかしら?」
 ワインを水のように飲みながら言うアスはの空になったグラスに、シンゴはワインを注いだ。
「セックスは全てではないと思うけれど、肝心なものではあるとは思うよ」
「……」
「どうかした?」
 アスカが少しムッとしているような気がして、シンゴは彼女を恐る恐る見る。
「なんだか言葉を選んで喋っているような気がして」
「僕が?」
「そう。作家だからかなぁ……。なんだか、遠回しな言葉を言われている気がするのよ」
「そんなつもりはないんだけど……」
 シンゴは苦笑しながら否定する。さすが、別れさせ屋だけあって、人をよく見てるなぁ、と思った。

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