小説「サークル○サークル」01-259. 「加速」

「いらっしゃいませー」
自動ドアをくぐると、気持ちの良い挨拶が聞こえてきた。レジにふと目を遣れば、そこにはユウキがいる。シンゴは適当に菓子パンと紙パックのコーヒーを手に取ると、レジに向かった。
「いらっしゃいませ。ストローはおつけになりますよね」
「ああ」
ユウキに言われて、シンゴは頷いた。
「最近、シンゴさん来てくれないから心配してたんです」
「心配?」
「だって、ほら、奥さんのこととかで何かあったのかなって」
「ああ……そのことなんだけど……」
「はい……?」
「今日、何時に終わる?」
「あと10分ほどで」
「じゃあ、いつもの公園で待ってる」
「わかりました」
ユウキはレジの後ろに別の客が並んだのを確認すると、手際良く、会計をした。
シンゴは商品とおつりを受け取ると、ユウキといつも会っている公園へと向かう。
のんびりと歩きながら、穏やかな景色に視線を漂わせた。
自分以外の人はいつだって、幸せそうに見えることにシンゴはもやもやした気持ちを抱えていた。

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