小説「サークル○サークル」01-202. 「加速」

ユウキが差し出したホットカフェオレを受け取ると、シンゴは「ありがとう」と微笑んだ。ユウキのちょっとした気遣いが最近荒んでいたシンゴの心に優しく沁みる。
ユウキは何も言わず、シンゴの隣に腰を下ろした。シンゴはふとユウキとこんな風に話すのは何回目だろう、と思った。そして、その疑問が特に意味をなさないことに気が付いて、考えるのをやめた。
シンゴはさっき買った菓子パンをレジ袋から取り出すと、パッケージを開ける。
「オレも食べようっと」
ユウキはレジ袋の中から、おにぎりを取り出した。
「今日は廃棄の時間じゃなかったんで、一番安いシーチキンマヨネーズにしちゃいました」
ユウキはそう言ってはにかむ。シンゴはユウキの無邪気さが羨ましかった。自分にはそんな無邪気さは存在しない。若かった頃を思い返してみても、そんな無邪気さは皆無だった。こういう屈託のない笑顔を向けられるタイプは人に愛される。それがどれだけ財産であるか、きっとユウキは気が付いていないのだろうな、とシンゴは思った。

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