小説「サークル○サークル」01-396. 「加速」

電車に揺られること約十分。アスカはレナたちの待つカフェのある最寄り駅に着いた。
改札を抜け、改札前にある地図で方向を確認すると、歩き出す。
駅から更に十分近く歩くと、ガラスの扉が印象的なオシャレなカフェがあった。
店名を確認して、ドアを開ける。中は思ったより、広かった。
店員に待ち合わせだということを伝えると、アスカは店内を見回した。入り口付近の他の席と隔離された個室にレナとヒサシがいた。
「お待たせしました」
アスカはそう言うと、二人を交互に見た。
ヒサシは「どうぞ」とアスカに席に座るよう促す。
レナは困り顔でアスカを見ていたが、アスカは表情を変えることなく、バッグを置き、コートを脱ぐと椅子に座った。
おしぼりとお冷を持って来た店員にアールグレイティーを頼むと、座り直して、レナを見た。
「アスカさん、お忙しいところすみません。急にお呼び立てしてしまって……」
「気にしないで。大丈夫よ」
仕事だから――と言いそうになったのをアスカはぐっと飲み込んだ。アスカにとって、これは仕事だけれど、レナにとっては、自分のことに親身になってくれる相手なのだ。それをわかっているアスカは、レナをがっかりさせないように言葉を飲み込み、その代わりに微笑んだ。

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