小説「サークル○サークル」01-389. 「加速」

 家に帰って来ても、まだアスカは寝ていた。シンゴはいつものように朝食の準備を始める。
 シンゴがお湯を沸かしていると、寝室のドアが開く音が聞こえてきた。
「おはよ……」
 アスカはぼーっとしたまま、シンゴを見る。
「おはよう。二日酔いは大丈夫?」
「うん」
「コーヒーと紅茶どっちがいい?」
「紅茶」
「顔洗っておいで」
 シンゴはアスカにそう言うと、にっこりと微笑んだ。アスカはシンゴの微笑みに小さく頷くと、ぼーっとしたまま、洗面所へと消えていく。
 しばらくすると、顔を洗って、さっきよりはすっきりとした表情を浮かべたアスカが戻ってきた。無言のまま、いつもの席に着くと、シンゴが紅茶を運んでくれるのをじっと待っている。
「お待たせ」
 シンゴの言葉にアスカは「ありがとう」と答えると、シンゴが席に座るのを静かに待っていた。
 シンゴはコーヒーを入れたカップを持って、席に着くと、目の前にある菓子パンを見て「どれがいい?」とアスカに訊いた。
「チョコクリームパン」
 あれだけ飲んだのに、やっぱり、アスカはそれを選ぶのだな、とシンゴは内心感心していた。

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