小説「サークル○サークル」01-367. 「加速」

「はい、これ」
シンゴはアスカに数枚の紙を手渡した。
「何……?」
アスカは何を手渡されたのかわからず、怪訝な顔をする。しかし、手に取った紙に視線を落とし、「これって……」と驚きの表情へと変わった。
「ターゲットとの会話でアスカが有利に話を展開出来るようなシュミレーションをしてみたんだ」
「すごい……。昨日の夜、これを?」
「まぁね」
アスカは一通り、目を通すと、シンゴの瞳をしっかりと見据える。
「シンゴ、本当にありがとう」
アスカは心底嬉しそうに言った。彼女の瞳にはシンゴへの尊敬と感謝がたたえられているようだった。
「じゃあ、早速、今日の夜、バーに行ってみるわ」
アスカはそう言うと、にっこりと微笑む。
その微笑みにシンゴは若干の不安を感じずにはいられなかった。
ターゲットとアスカとの間に何かが起こるとは思っていない。けれど、可能性はいつだって、ゼロではないのだ。
シンゴはもやもやとした気持ちを抱えたまま、微笑むアスカに微笑み返した。

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