小説「サークル○サークル」01-172. 「加速」

「いい方法?」
 アスカは怪訝な表情を浮かべたまま、シンゴを見た。シンゴは笑顔を崩さぬそのままで説明し始める。
「そう。いい方法。時間を作らなきゃいけないなら、今まで通り、僕が家事をやればいい」
 シンゴの言葉にアスカは再び眉間に皺を寄せた。
「でも、シンゴだって、仕事が忙しいでしょ?」
「忙しいけど、僕の場合は家にいられるし、君ほど、忙しくもないよ」
「でも……」
「この案件が終わるまで、っていう期限付きなら、君が気にしていることもクリア出来ると思うけど」
 アスカはシンゴの提案について、じっと考え込む。アスカの頭の中を様々な考えが過ぎった。シンゴの仕事の邪魔をしたくない、シンゴに負担をかけたくない、だけど、受けた依頼は成功させたい――考えれば考えるほど、何を優先すべきかがわからなくなっていく。
「そんなに悩むことじゃないと思うけどな。期間限定なわけだし」
 シンゴは柔らかな笑みを浮かべて、アスカを見る。アスカはその微笑みに思わず「ありがとう」と言っていた。

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