小説「サークル○サークル」01-161. 「加速」

 アスカはシンゴと話す為に身体を少し前に乗り出す。
「この間までバーで働いていたでしょう? あの時にターゲットがこの女の子を連れて来てたのよ」
「アスカとこのレナって子は、面識があるってこと?」
「向こうが私を覚えていない可能性もあるから、そこはなんとも言えないんだけど、接触はしてる。もし私のことを覚えてたとしたら、いきなりカフェの店員になって現れたら、怪しまれると思う」
「そうだね……。チェーン店なら、飲食店の派遣はあるだろうけど、アスカの働いてたバーは個人経営だろ?」
「あれ……。私、シンゴにどんなバーで働いてるか言ってたっけ?」
「い、いや……そんな気がしただけだよ」
 しどろもどろになるシンゴにアスカは小首を傾げたが、それ以上は追及しなかった。きっと、書いている小説のこととでも、混乱しているのだろう、とアスカは流すと話を元に戻す。
「それでね、このレナって子に接触するにあたり、私はこのカフェの常連になろうと思うの」
「このカフェの?」
「そう。ただ、1つ問題があるのよ」
「どんな?」
「ここのカフェ、ターゲットの働くオフィスビルの1階に入ってるの。勿論、このビルに勤めてる人間以外も使ってるわ。だから、私が使うのはおかしなことじゃない。だけど、いきなり常連になるにはそれ相応の理由が必要なのよ」
「レナと接触した時の説明用にってこと?
「その通り。さすが、作家だわ」
 アスカの一言にシンゴは照れ笑った。

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