小説「サークル○サークル」01-95. 「加速」

「でも、ご主人が私のことを話したからって、私のことがバレているとは限らないでしょう?」
「そうかもしれません。でも、やたらにあなたの話を聞かせるんです。それに耐えられなくなって……」
 アスカにはマキコの言っている意味が漸く理解出来た。好きな相手から、別の女の話を聞きたくない、というのはよく聞く話だ。多少なら、我慢も出来るだろうが、それが毎晩ともなれば、嫌になってもなんらおかしくはない。それにシンゴが言っていたではないか。「女は全て浮気相手になりうる」と。マキコは口にこそ出しはしないが、そう思っているのだろう。だから、余計にアスカをヒサシから遠ざけたくなったのだ。
「そうですか……。でも、調査を再開したいんですよね?」
 アスカの問いにマキコは力強く頷いた。
「はい……。勝手なお願いだとは思いますが、やっぱり、彼と不倫相手を別れさせてほしいんです」
「わかりました。お引き受けしましょう」
 アスカは敢えて、調査を継続していたことは告げなかった。
「ところで……」
「なんでしょうか?」
 アスカの言葉にマキコは不安げな表情を浮かべる。
「最近、旦那さんは私を含め、女性の話をされますか?」
「いえ……。していませんけど、それが何か?」
「していないのなら、それで構いません」
 アスカはそう言って、にっこり微笑んだ。

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