小説「サークル○サークル」 01-49. 「動揺」

 ただバーに飲みに来て終わり、なんて子供じみた関係のはずがない。むしろ、ヒサシは大人の関係を望んでいるに違いない。第一、マキコは今妊娠中なのだ。妊娠中にセックスが出来ないわけではなかったが、ある程度落ち着いてからしかすることは出来ないし、身体のことを考えたら、マキコは嫌がるかもしれない。そう考えると、辻褄が合うような気がしていた。
ヒサシがいつも連れてくる女が違うのは、違う女で楽しんでいるのか、それともアスカの想像したこととは真逆のこと――つまり、テクニック不足で同じ女を二度抱けないか、のどちらかだろう。
 そこまで考えて、アスカはふとマキコの依頼内容を思い出した。「主人とその不倫相手を別れさせたいんです!」とマキコは言っていた。不倫相手、と断定するからには、一度だけの関係ではないということだろう。そうなると、その女だけはヒサシにハマったということになる。よっぽどの場合を除いて、何人もの女に愛想を尽かされるような男に女がハマる確率は低い。そうなると、テクニック不足ではない、ということになり、やはり最初にアスカが立てた仮説が有力だということになる。ただその場合、どうして1人を除いて、一度きりなのか、ということが腑に落ちない。
 アスカはグラスを拭きながら、止まることのない思考を巡らせ続けていた。

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