小説「サークル○サークル」01-30. 「作戦」

リビングの電気を点けると、並べられた食事はすでに冷め切っていた。アスカはリビングに掛けられた時計を見上げる。時刻はすでに2時半を回っていた。明日の朝はゆっくり起きるにしても、やはり食事に手をつけるのは躊躇われた。胃に重たいからだけでなく、今食べてしまったら、きっと無駄な肉へと直結してしまう。最近たるんできた腹であったり、二の腕が気になるのだ。贅肉がつくのは一瞬だが、それを落とすには莫大な時間と努力が必要となる。シンゴには悪いけれど、食べるのをアスカは断念した。
「明日、謝ればいいよね……」
 ぽつりと呟いて、彼女はそのままバスルームへと直行する。熱い風呂に浸かり、疲れを癒したら、今日はそのまま何もせずに眠るつもりでいた。

 目覚まし時計は鳴らない。たっぷり眠りたい時、アスカは決して目覚まし時計を鳴らさないのだ。幸い、シンゴも自由業の為、目覚まし時計を必要としない。同じ寝室で眠っていて、相手の目覚まし時計の音に起こされずに眠れることが、アスカがシンゴと眠る上で唯一の利点と言っても過言ではなかった。正直なことを言ってしまえば、別の寝室で眠りたいというのが、彼女の本音だったが、それを実行に移すほど、彼女は不人情ではない。しかし、同じベッドで一緒に眠る意味をアスカは見出すことが出来なくなっていた。

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