小説「サークル○サークル」01-429. 「加速」

アスカの頭に疑問符が浮かぶ。
自分が浮気をしているのだとしたら、こんなに悲しそうな顔を出来るだろうか? 演技にしては上手すぎる、とアスカはマキコの表情を見ながら思った。
「果たして、そうでしょうか」
アスカはヒサシには他にも女がいることを思い出し、口にする。
レナと別れたことは確かにショックだったかもしれないが、不倫相手は他にもいる。もし仮にレナを失ったことでショックを受けているのだとしたら、それは一時的なものに過ぎない。そのうち、ヒサシはけろっとした顔で、他の女に愛を囁くことだろう。
「他に何かショックを受けるようなことは思いつきません」
マキコはきっぱりと言い放つ。どこまでも自分が浮気をしていることはしらを切り続けるつもりだろうか。
それならそれでまわない、とアスカは思った。
アスカがすべきことは、他人の夫婦間の問題に首を突っ込むことではない。別れさせ屋として依頼された案件を解決することだ。それ以上のことは、自分の領域ではない、とアスカは自分に言い聞かせた。

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