小説「サークル○サークル」01-424. 「加速」

“あなたも浮気していたんですね”とストレートに言うわけにもいかない。けれど、事実関係をはっきりさせておきたいという気持ちもあった。でも、それはアスカの立場で踏み込んでいい領域ではないこともわかっている。
アスカは煙草に火をつけて、気持ちを落ち着かせようとした。一本吸うともやもやは少しおさまった。続けて、二本目に火をつける。二本目を吸い終えても、気持ちが完全に落ち着くことはなかった。
大きく溜め息をついて、天井を見上げる。アスカは机の上に足を上げ、目をつぶった。
自分のしている仕事の意味を考える。誰かを幸せにして、誰かを不幸にする。けれど、それはただ元の状況に戻しているだけだ。
元の形から変形して、不倫という形を選ぶには、きっと何かしらの理由がそこにはある。その理由を半ば無視して、法的に問題があるからと、不倫をやめさせるのだ。
それが正しいのか、と問われれば、正しい、と胸を張って言えない、とアスカは思う。
男と女のことに関しては、絶対という正しさは存在しないのだ。

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