小説「サークル○サークル」01-422. 「加速」

アスカは風呂から上がり、食卓テーブルを挟んで、シンゴと向かい合って座った。
熱々のビーフシチューと温玉サラダ、フランスパンが目の前に置かれている。
赤ワインで乾杯すると、二人は食事を始めた。
「今日は上手くいった?」
シンゴの言葉にアスカは待ってましたとばかりに口を開いた。
「上手くいったの。でもね、すごいハプニングもあったのよ」
「ハプニング?」
シンゴはビーフシチューを口に運ぶ手を止めて、不思議そうな顔をする。
「ターゲットの奥さん――依頼主が偶然、喫茶店に来たの」
「へぇ……。そんなことがあったんだ」
「しかも、奥さんは不倫相手とイチャイチャしながら、入って来たのよ」
「えっ!? それは修羅場になったんじゃ……」
「そう思うでしょ? でも、ターゲットが奥さんに気が付いて、じっと見てたら、奥さんもターゲットの視線に気が付いたのよ。だけどね、奥さんは顔色一つ変えなかったの」
シンゴは驚いたように目を見開いた。やはり、普通は動揺するものなんだな、とアスカは思った。

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