小説「サークル○サークル」01-419. 「加速」

アスカはヒサシが話し出すまで、何も言わないでおくことにした。レナと別れさせる為に依頼してきたのはあくまでユウキということになっている。今、アスカが変なフォローを入れてしまったら、マキコが依頼者である、と勘の良いヒサシなら勘付く可能性がある。
そんなアスカの考えを見抜いたのか、ユウキがヒサシを見て言った。
「どうかなさいましたか?」
「い、いや……」
明らかに動揺しているヒサシを横目にユウキは続ける。
「レナと別れてくれる気になりましたか?」
「……」
ユウキはヒサシが動揺している隙に、別れると言わせようとしているのだということにアスカはすぐに気が付いた。けれど、こんなことくらいで、ヒサシは首を縦には振らないだろう。
ヒサシはもう一度、マキコたちの方に視線を向ける。アスカも不自然にならないように、マキコの方へと視線を向けた。マキコはまだ不倫相手と楽しそうに話している。まだ。ウェイトレスに席へ案内されていないようだった。

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