小説「サークル○サークル」01-416. 「加速」

埒が明かないな、とアスカは思った。こんな時、シンゴならどうするだろう、とふと思う。
別れさせ屋なのは、アスカだったが、そのブレーンはシンゴと言っても過言ではない。行き詰った時は、必ずシンゴが助けてくれた。
ヒサシに「別れる」と言わせるには、何を言えばいいんだろうか。それとも、何も言わない方がいいんだろうか。アスカは沈黙が落ちいている間、ずっと考えていた。けれど、答えは出ない。答えが出ないのだから、黙っている以外にどうすることも出来なかった。
沈黙を誰も破ろうとはしない。こんなに重たい沈黙は久々だった。
どうして「別れる」のたった一言をヒサシは言わないのだろう。どうして「別れる」のたった一言を言わせられないのだろう。
堂々巡りの思考にアスカは思わず溜め息をついていた。
その溜め息にヒサシの視線が動く。アスカとヒサシの視線がぶつかった。以前のアスカだったら、多少のトキメキがあったかもしれない。でも、今は違う。腹立たしさしか感じなかった。

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