小説「サークル○サークル」01-404. 「加速」

「個人差ですか?」
 ユウキはヒサシの言っている言葉の意味が理解出来ないと言いたげに同じ言葉を口にする。
「そうです。不倫は時に幸せでもあり、不幸せでもあるのではないか、と私は思っています。たとえば、不倫をしている当事者同士でも幸せだと感じている人もいれば、不幸せだと感じている人もいるでしょう。好きな人と一緒にいられて幸せだ、と思っている人もいれば、どうしてこんな関係を持ってしまったのだろう、と不幸せに思っている人もいるかもしれません」
 ユウキはただひたすらヒサシの言葉を黙って聞いている。アスカは気を紛らわせるようにカップに口をつけた。レナもそれに合わせたようにカップを手にした。
「パートナーに不倫をされている当事者――今回だと私の妻の立場です。その人にとっても、幸せな場合と不幸せな場合があると思います」
「不倫をされているのだとしたら、不幸せしかないのでは?」
 ユウキは納得がいかない、と言いそうにヒサシを見た。

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