小説「サークル○サークル」01-402. 「加速」

「そうですか……。僕と何をお話になりたいんですか?」
 ユウキはいつものように“俺”とは言わずに、丁寧に“僕”と言った。その姿勢からは緊張が溢れている。アスカはドキドキしながら、隣に座るユウキを見ていた。彼がもし感情的になってしまったら、今回の計画は全て失敗に終わる。アスカもユウキ同様、緊張していた。
「何を……そうですね。どうして、私と彼女を別れさせたいのか、という理由からまず聞きましょうか」
 大人の余裕なのか、はたまた依頼をしていることを知っているという余裕なのか、ヒサシはいつもとは少し違うゆったりとした口調で喋った。
 アスカはヒサシの違いにドキリとする。その驚きと緊張がヒサシにバレないようにアスカは神妙な顔つきで静かに二人の話に耳を傾けていた。
 ユウキは小さく深呼吸をする。息の漏れる音がアスカの耳に届き、アスカの緊張は更に高まった。こういう時、自分がどんと構えていなければ、と思うのに、緊張してしまうのだから困ったものだ。

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