小説「サークル○サークル」01-391. 「加速」

 こんな当たり前の夫婦の朝をシンゴは幸せだと感じていた。
 少し前まではこんな光景は想像すら出来なかった。
 ターゲットはレナと別れることを渋っているようだけれど、しっかり別れてもらわなければいけない、と思う。そうでなければ、今の幸せは消えてしまうからだ。
 男として自信があればいいけれど、シンゴには男としての自信は皆無と言ってもいい。それくらい、男としての自分に自信がなかった。
 ヨーグルトを食べながら、シンゴはふと手を止めた。
「仕事、上手くいきそう?」
「上手くいかせるわ。シンゴにも考えてもらったもの」
「うん、頑張って」
「ありがとう。レナの幼馴染にも協力してもらえることになったし、あとはターゲットの出方を見るだけ」
「そうだね。健闘を祈るよ」
 シンゴの言葉にアスカは力強く頷いた。

 アスカは食事の後、身支度を整えると、事務所へと向かった。
 シンゴはアスカを見送って、大きな溜め息をつく。
 男として自信があれば、きっとこんなもやもやした気持ちを抱かずに済むのだろう。
 シンゴはもう一度溜め息をつくと、書斎へと入っていった。

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