小説「サークル○サークル」01-22. 「作戦」

 時間が深まるにつれて、客足が増え、店内も次第に騒がしくなっていた。
まだカイソウ ヒサシは来ないのね……。今日は空振りかしら、とアスカが溜め息をつきかけた頃、カイソウ ヒサシは、黒ストライプのスーツから伸びる細い足が印象的な若い女を連れて、店に入って来た。ヒサシは黒縁の眼鏡をかけ、スーツをぱりっと着こなし、どこからどう見ても出来る男然としている。これじゃあ、若い女の子がヒサシに靡いても仕方ないわね、とアスカは思いながら、ヒサシと若い女の前に水と温かいおしぼりを持って行った。
「いらっしゃいませ。おしぼりをどうぞ」
 作り笑いを浮かべ、愛想良くアスカは振る舞う。ヒサシはちらりとアスカを見て、おしぼりを受け取ると、すぐさま、隣にいる若い女に視線を戻した。アスカはコースターを2人の前に置きながら、女の様子を窺う。茶色いセミロングの髪には優しくウェーブがかかっており、時折かき上げる髪から覗く耳には、上品なデザインのピアスがつけられている。外見を見る限り、マキコから聞いていたカフェの店員という雰囲気はなかった。
――まさか、別の女……?
 アスカは眉間に皺を寄せ考え込む。すると、突然マスターに名前を呼ばれた。

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