小説「サークル○サークル」01-357. 「加速」

「依頼者が妊娠しているっていう嘘をついてるって話は前にしたでしょう?」
「ああ」
「それでね、やっぱり、依頼者は妊娠してない、とは言っては来なくて」
「そりゃあ、妊娠してないのをしてるって言ってて、やっぱり、嘘でした、とは言いづらいよね」
「うん……そうだとは思うの。だけど、今日、もう一つ、不自然っていうかなんていうか……奇妙なことがあったのよ」
「奇妙?」
 シンゴは鸚鵡返しに問う。
「そう。奇妙、が一番しっくり来る気がする」
 アスカはそう言って、ソファに座り直した。
「前に担当した案件で使った写真に依頼者が写っていたの」
「前の案件では、彼女がターゲットだったってこと?」
「そう……。随分、昔の案件で、まだシンゴにも出会う前だったと思う。本当に偶然だったのよ。写真が床に落ちて……それで見つけたの」
 シンゴはアスカの話を真剣な眼差しで聞いている。
 些細なことかもしれなかったが、アスカはシンゴのそんな態度が嬉しかった。

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