小説「サークル○サークル」01-349. 「加速」

シンゴはもう寝るというアスカと別れると、書斎に戻った。
原稿は書き終わっている。読み終わった後、清々しい気持ちになれるようにハッピーエンドにした。あとは推敲を終えれば、原稿を送れる。
シンゴは文字の並んだ画面を見ながら、首を傾げた。
小説はフィクションだ。けれど、現実の方が随分と衝撃的なことが多い。
今回だってそうだ。小説のモチーフはアスカのことだけれど、結末は至って明快だ。しかし、アスカの前に立ちふさがった事実は複雑だった。
それにしても……とシンゴは思う。
どうして、依頼者はアスカにあんな嘘をついたのだろうか?
シンゴにはどうしてもその理由が思いつかなかった。
早く解決してほしい、というのは、依頼者の心情としては理解出来る。けれど、それだけの理由にしては、いささか弱い気がするのだ。
もしかして……とシンゴは思う。
でも、そんなことはあるわけない、とも同時に思った。
シンゴは文字の並んだ画面を見つめたまま、一つの可能性について、思考を巡らせ始めていた。

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