小説「サークル○サークル」01-348. 「加速」

「……それはひどい」
「でしょう? 私も正直、驚いたわ」
「でも、依頼者も嘘をついてるんだろう?」
「そうなのよ。依頼者は妊娠してるって私に言ってたの。でも、ターゲットの話によると、関係はないから、子どもが出来るはずはない、って」
アスカは自分の口から発せられる言葉を一つ一つ確認するように、ゆっくりと喋った。
「妊娠してないのに、妊娠してるって言ってた……?」
「ね、理解しがたいでしょう?」
「何か理由がない限り、そんな嘘を第三者の君につく必要はないよね」
「そうなの。ターゲットにじゃなく、私になぜそんなことを言ったのか……。子どもが産まれる前に浮気をやめさせたいって言ってはいたけど……」
「てことは、早く別れさせてもらう為に、君に嘘を?」
「……そういうことだと思うんだけど、なんだか腑に落ちなくて……」
「僕も話を聞いていて、納得は出来ないな……。でも、一体、なんの為に……?」
「全く見当がつかないわ。一度、依頼者には色々と報告もしなきゃいけないし、会わなきゃいけないんだけど、なんて切り出そうかと思って……」
アスカは困惑した表情のまま、ぬるくなったホットミルクを喉に流し込んだ。

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