小説「サークル○サークル」01-344. 「加速」

夜遅く、アスカは家に帰って来た。終電はすでに終わっていたので、タクシーで最寄駅まで帰ってくると、そこからのんびりと家まで歩いた。タクシーで家まで帰る気にはなれなかった。
夜道は暗いし、風は冷たい。それでも、歩くのを選んだのにはわけがあった。
アスカ自身、まだ頭の中が整理しきれず、一人でゆっくり考えたかったのだ。
依頼者のマキコが自分に妊娠していると嘘をついていたこと、ヒサシにとって、レナは一番愛している女ではないこと。
マキコにしても、ヒサシにしても、アスカにとっては、どっちもどっちに見えて仕方なかった。
そもそも、結婚なんしてしなければ良かったような二人なのだ。そんな二人が結婚してしまったから、別れさせ屋に依頼をしなければならなくなってしまったのだと思う。
不倫をしている女性を擁護するつもりはなかったけれど、アスカにはレナが不憫に思えてならなかった。
ヒサシと接すれば接する程、大人の男性のずるさが見える。レナの純粋さにヒサシが漬け込んでいるように、アスカには見えていた。

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