小説「サークル○サークル」01-338. 「加速」

「どうして?」
アスカは間髪入れずに問う。
「他の男とこうやって、接触するような仕事に奥さんに就いてほしいと思う男なんていないよ。ただ……辞めさせたりしたら、自分の器の小ささを露呈してしまうから、辞めさせたりしないんだよ。男なんて、ほとんど虚栄心で出来てる」
「その意見を否定はしないけど……。あなたの理屈から言ったら、私の夫は我慢してることになるわね」
「でも、全ての男がそういう考え方なわけじゃない。心の広い男だっているさ」
「そうね……」と言って、アスカはシンゴの本心はどうなのだろうと思った。今まで一度だって、きちんと自分の仕事について、シンゴに意見を求めたことはない。それだけ、シンゴの気持ちを考えてこなかったということのような気がした。
「そう言えば、お子さんはいないの?」
アスカはヒサシの妻であるマキコが妊娠中であることを知っていたものの、そ知らぬ顔で訊く。
「いないよ。ここ、一年くらい関係も持ってないから、出来ることもない」
ヒサシの言葉にアスカは自分の耳を疑った。
――子どもが出来ることもない……?
アスカは心の中がざわつくのを感じていた。

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