小説「サークル○サークル」01-322. 「加速」

「でも、あなたは別れたいのよね?」
 アスカは棒棒鶏を皿に取りながら言う。
「はい。別れるつもりではいます。でも、彼が取り合ってくれないと、どうすることも出来なくて……」
「そうよね……」
 アスカは次の作戦を考えていた。ここでレナに音信不通にさせてしまうのも一つの手ではあるけれど、ヒサシはそんことを許さないだろう。きっと何かしらのアクションを起こしてくるはずだ。そうなれば、アスカの対応は後手に回ってしまう。勝負に勝とうとするのならば、先手を打たなければならない。
 今、ここで結論を急ぐのは得策じゃないわね……。
 アスカはこの後に控えているヒサシとの待ち合わせを考えて、敢えて、レナにアドバイスするのをやめることにした。
「少し時間をおいた方がいいのかもしれないわね」
「えっ……」
「だって、彼だって、きっと戸惑っているはずよ。いくら不倫とは言え、好きな人から別れを告げられたら、どうしていいかわからなくなると思うの」
 アスカはもっともらしく言った。内心では、そんなことを思っていないのに、だ。

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