小説「サークル○サークル」01-300. 「加速」

思いは加速していく。嫌なほど、好きという感情が走って行く。けれど、加速したものはいずれ減速し、やがて止まるように出来ている。同じスピードが続くことは決してない。
アスカは加速していく気持ちに気付いた時、いつか止まってしまう時が来ることを恐れ、そして、安心してもいた。
自分にはシンゴがいる。いつまでも、別の誰かを思い、追いかけようとしていいわけなどなかったのだ。結婚は契約だ。けれど、一番簡単に破棄してしまえるものでもあった。否、簡単に破棄してしまう人は、結婚が一つの契約である、ということをそもそも認識出来ていないのだろう。認識出来ていたとしたら、浮気なんてするはずがないのだ。
アスカはレナと別れると、一路バーへと向かった。以前、バイトをしていたあのバーだ。ヒサシがいるのかどうかはわからない。賭けだった。けれど、行かずにはいられなかったのだ。
電車に乗り、歩きなれた道を歩く。夜の風が冷たかった。アスカはぼんやりと灯る街灯に照らされながら、道を急いだ。その後ろにシンゴの姿があることに、アスカは気が付かない。
それぞれの思いを交錯させながら、二人は夜の道を急いでいた。

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