小説「サークル○サークル」01-297. 「加速」

「時間が解決してくれるなら、私も立ち直れるんでしょうか……」
「ええ、あなたにしっかり覚悟があるなら大丈夫なはずよ」
「私、頑張ってみます。彼に、さよならを……言ってきます」
「彼とちゃんと別れられたら、飲みに行きましょう」
「えっ……」
「新しいスタートを切るんだもの。お祝いが必要だわ」
「アスカさん……」
レナは瞳を潤ませて、アスカを見た。アスカは穏やかに微笑み、レナを見据える。
「彼と別れたら、アスカさんに連絡しますね」
「ええ、連絡待ってるわ」
アスカは通りすがりの店員を呼び止めると、ドリンクを頼み、レナは追加で料理を頼んだ。
さっきまでの胸の閊えが嘘のようにレナは楽しそうにアスカと他愛ない話をし始める。
これからのことをレナはどう考えているのだろうか。アスカは少しの不安と心配を持ちながら、レナを見ていた。
彼女を受け止める誰かがいればいい。けれど、もしいないのだとしたら、自分が受け止める誰かになろう、とアスカは決めていた。仕事でレナと接触しただけなのだから、そんなことをする必要は全くない。しかし、アスカには真っ直ぐなレナを放っておくことなど出来なかった。

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