小説「サークル○サークル」01-295. 「加速」

レナはしばらく俯いた後、しっかりと顔を上げた。
「私……別れた方がいいかなって……そう思ってるんです」
レナは泣き出しそうなのを堪えながら、切れ切れに言葉を紡ぐ。
「そう……。よく考えたわね……」
アスカは内心ガッツポーズを取っていたものの、表面的にはレナに同情するような素振りを見せていた。
これでレナがヒサシと切れてくれれば、アスカの仕事は無事終わる。マキコの依頼は完遂出来たことになる。
「アスカさんと話をしていて、元々、自分でも不倫なんて良くないなって思ってたから……。だから、私……やめようかなって……」
アスカはレナの話を静かに聞いていた。
「だけど、私、彼がいなくなってしまったら……って思うと怖くて……」
「わかるわ」
アスカは間髪入れずに言った。レナは少し驚いたようにアスカを見る。
「彼がいなくなってしまうことで、自分が壊れてしまうような、そんな不安……。それから、どんな素敵なことがあっても嬉しいとか幸せだとか思えないんじゃないかっていう不安……。いろんな不安が心の中に渦巻くのよね」
アスカは視線をテーブルの上へと落とした。

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