小説「サークル○サークル」01-292. 「加速」

ユウキにはああ言ったものの、シンゴは然して動揺も緊張もしていなかった。それは今回会うのが初めてだからではないということと、ある程度の覚悟が出来ているからだろう。アスカとターゲットが浮気をしているのが確かならば、アスカはきっと別れを切り出すだろう、とシンゴは思っていた。その時、如何にさりげなく受け入れるかがシンゴの手腕にかかっていた。男のプライドとも言える。
本当は全てを知っていた。知っていて、知らない振りをし続け、自分のところに戻って来るなら、寛大な心で受け入れ、出て行くというのなら、快く送り出す。シンゴは考えに考え抜いて、これが一番スマートな対応だと思ったのだ。
本心は縋りたい。縋って戻って来てくれるなら、プライドなんて捨てて、縋ってやりたいとも思った。けれど、そんなことをしたって、ますますアスカが離れていくだけだ。それをわかっていたシンゴは、アスカが一番心苦しい方法を取ろうとしているとも言えた。

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