小説「サークル○サークル」01-287. 「加速」

「仕事はどう?」
アスカは当たり障りのない話題を振る。
「はい。いつも通りです。仕事してる時は仕事のことだけ考えてられるからいいなって」
レナはそう言って苦笑する。アスカといろいろ話をしていくうちに不倫をしているということの苦痛が次第に増しているようだった。
「そう……」
アスカは相槌を打ちながら、角を曲がる。そこにアスカの行きつけの和食屋があった。
「ここよ」
店に入るアスカの後をレナがついていく。店員の「いらっしゃいませ」という落ち着いた声で二人は出迎えられた。

注文した料理がいくつかテーブルに到着し、二人は食事に箸をつけていた。会話は世間話が中心で不倫の核心にはまだ及んでいない。
グラスの飲み物が半分くらいなくなったところで、もうそろそろいいか、と思い、アスカは切り出した。
「さっき言ってた仕事に打ち込んで考えないのが楽……っていうのだけど……。それって、もう恋が終わりに近づいてるってことじゃないかしら」
アスカの言葉にレナの表情が一瞬曇った。

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