小説「サークル○サークル」01-284. 「加速」

 アスカが前方を見て、ケータイをしまっている姿が見えた。
「えっ……」
 突然、ユウキが緊張感のある声を出した。驚いて、シンゴはユウキを見る。その顔色はひどく悪かった。
「どうかしたの?」
 心配そうにシンゴがユウキを見ると、彼の顔はみるみるうちに白さを増した。
「シンゴさん……こんなことってあるんですね」
 シンゴはユウキの言っている意味がわからず、眉間に皺を寄せた。
「奥さんの待ち合わせ相手、俺の言ってた女の子です……」
 シンゴは一瞬のうちに目の前が真っ暗になる。これはまずい、と思った。アスカが会っているレナはターゲットの不倫相手であり、そのターゲットとアスカは不倫している。そこにレナのことを想うユウキがいるのだ。ユウキの頭に血が上ってしまえば、修羅場になることは間違いない。勿論、その時点でシンゴがアスカを尾行していたこともバレるだろう。レナにだって、アスカの正体はバレてしまって、泥沼の展開が待ち構えていることは容易に想像出来た。

Facebook にシェア
GREE にシェア
このエントリーをはてなブックマークに追加
[`evernote` not found]
[`yahoo` not found]

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


dummy dummy dummy