小説「サークル○サークル」01-272. 「加速」

「全然大丈夫じゃないじゃないか」
「ごめん……」
「救急箱持ってくるから、止血して、そこ座ってて」
シンゴはダイニングテーブルの椅子を指差すと、寝室へと消えた。
アスカは溜め息をついて、血の流れる人差し指を抑えて、椅子に座った。シンゴが寝室に行く寸前、椅子を引いてくれていたおかげで、簡単に椅子に座ることが出来た。
近くにあったティッシュで指を覆い、シンゴが戻ってくるのを待つ。
随分とケガなんてしていなかったし、消毒液があったかな、とアスカは思いながら、ぼんやりとテレビの方を見た。
テレビ画面の映像はアスカの位置から見えなかったけれど、画面から放たれる光がちらちらとローテーブルに反射しているのが見えた。
しばらくすると、シンゴが救急箱を持って、戻って来た。
「ごめん」
アスカは救急箱をダイニングテーブルに置くシンゴに申し訳なさそうに言う。
「気にしなくていいよ。それより、まだ血、止まりそうにないね」
「結構、深いのかな……」
「いや、指はよく血が出るから。取り敢えず、消毒しよう」
そう言って、シンゴは救急箱から消毒液を取り出した。

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