小説「サークル○サークル」01-271. 「加速」

アスカは食器を洗いながら、テレビを観ているシンゴをキッチンからちらりと見る。
シンゴは難しい顔をして、テレビの画面を凝視していた。
そんなに嫌なニュースでも流れているんだろうか、と思ったが、ふとアスカはシンゴが仕事で悩んでいるのかもしれない、と思った。
シンゴは今までろくに小説を書いていなかった。アスカの前では?にも出さないが、ブランクがある分、本当は書くのが辛いのかもしれない。
アスカは放っておくのがいいのか、それとも、そのことについて声をかけた方がいいのかを悩む。
どうしよう……と思っていた矢先、手から皿が滑り落ちた。
アスカが「あ、」と思った時には甲高い音がして、皿が割れた。
慌てて水を止めて、皿の破片を拾い集めようとする。
「大丈夫?」
声がして振り向くと、アスカの背後にはいつの間にかシンゴがやって来ていた。
「大丈夫。ちょっと手が滑って、お皿が割れちゃっただけだから」
アスカはそう言って、破片に手を伸ばした。
「っ……」
急いでいた所為で、アスカは指を切る。あっという間に赤い血が滴った。

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